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2011年02月09日

瀬嵩前浜

貝の渚 第三話    瀬嵩前浜   名和純

島の東海岸を森の気配に包み込まれるまで北に行くと、静かな入り江があらわれる。
森の緑が鏡の中に溶け込んだような海の水際(みぎわ)を美しい浜が白く縁取っている。

その渚に沿って、キラキラと輝く帯が描かれている。
屈みこんでよくみると、それは、百種類はあろうかという小さな貝殻からなっているのだった。

その宝の山に手を伸ばすまもなく、さざなみが寄せてきて、
貝の帯を一瞬にして真砂の下に消し去ってしまう。
ところが、次の波が寄せてくると、さっきとはまた違う種類の貝が無数に散りばめられるのだ。
そんな波の手品がひたすら繰り返される。

いったい、この入り江は、どれだけの種類の貝を持っているのだろう。
そして、誰のために数百種の美しい貝殻を渚に揺(ゆ)り上げつづけるのだろう
(それを拾いにくる人間のためではもちろんない。
 こんなにたくさんの種類の貝殻、オカヤドカリたちだって使い切れない)。

そんなことを考え考え、この浜に通って300種の貝を拾い集めた。
それを分類して大学博物館に登録してしまうと、せいせいとした気持ちで僕は瀬嵩浜に向かった。
今日も渚に揺り上げられたばかりの幾百種の貝たちが待っている。

瀬嵩浜さん、また貝を一種ずつ借りますね。
今度は研究じゃなくて、子供たちに見せたいのです。
今度10人の子供たちを連れてきますから、二百種くらいの貝を用意しておいてもらえませんか。
どうかお願いします。
今、貝の世界を伝えたいのです。
この入り江に果てしなく続いてきた、ほんとうの海の物語のことを。


   瀬嵩前浜(めーばま)貝の浜
   さざなみひとなみ三十種
   一晩百なみ三百種
   しゃらしゃらしゃらしゃら貝の声
   三百種類の大合唱
   誰も聴かない貝のうた

   さざなみひとなみ三十種
   一晩百なみ三百種
   しゃらしゃらしゃらしゃら貝の声
   三百種類の大合唱
   誰も聴かない物語

   貝たちだけが知っている

  (聴いたら埋め立てやめるかな?)


瀬嵩前浜





瀬嵩浜 2009年12月










瀬嵩前浜





   さざなみが貝を揺り上げる




 








ーえころん通信 2010年1月号よりー




Posted by えころん at 19:45│Comments(4)
この記事へのコメント
瀬嵩は僕の生活の場所、ここ以外のことはほとんど知りません。
小学校の子供達には大浦湾とその流域の自然を知ってもらいたいと
写真や貝の展示などをたまにやっていますが、小さな貝のことはほとんど分かりません。できたら瀬嵩浜の貝のおすそ分けをいただければ嬉しいです。
Posted by しん at 2011年02月10日 13:06
しんさ~ん

しんさんはいつでも瀬嵩浜に行けるじゃん。
瀬嵩浜と貝たちがいつでも待ってるよ。

拾ったらさ、
貝の名前が分からないのがあれば、名和さんが教えてくれるよ。

わー今すぐにでも瀬嵩浜に行って貝を拾いたいよ~
しんさんはすぐ行けていいな~ほんとにいいな~
Posted by えころんえころん at 2011年02月10日 19:30
そうだね僕は瀬嵩でしか貝を拾わないから
おすそ分けはおかしいよね
いつか、拾ったものを教えてもらいたい
でも、それより この渚を一緒に歩いてみたい。
Posted by しん at 2011年02月11日 20:41
しんさん

今度、名和さんと瀬嵩浜に行く時は、きっと知らせるね。

名和さんはいつも「瀬嵩浜はすごい」と言ってます。
行くたび新しい種を探すそうです。

希望の浜です。

今、私は自分が住んでいる那覇市の海にも通っています。
那覇空港横の大嶺海岸です。
ここもすごいところです。
沢山の生きものに出会えます。
打ち上げ貝はあまりありませんが、自然の浜もあります。
大嶺海岸を知って欲しいと、えころんでは毎月「大嶺海岸歩き」ツアーをやっています。
案内人は自称名和さんのデシ宇地原です。
Posted by えころんえころん at 2011年02月11日 21:15
 
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