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2009年08月25日

ワンダフルライフ

  Natural in Cinema!  第9回 「ワンダフルライフ」     

是枝裕和監督の映画には、独特の空気感があります。
「幻の光」「Diatance」「誰も知らない」「花よりもなほ」とすべての作品に通じるものは、
人の生と死とを真摯に見つめようとする姿勢。
中でも「ワンダフルライフ」はなんと全編死後の世界です。

でもこの後生はとても穏やかなもの。
同じ死後を扱ったロビン・ウィリアムスの「奇蹟の輝き」(ヴィンセント・ウォード監督)と見比べてみると、捉え方には大きな差があります。

監督オリジナルのユニークな脚本では、死後ひとはいったんひとつの場所にとどまり、一週間の期限で、人生の大切な思い出をひとつだけ選びます。
それをスタッフが「映画」に再現し、一週間後の上映中、人は自分の「映画=思い出」をひとつだけ抱いて天国へと向かうのです。

思い出を語るシーンは素人さん、俳優さん織り交ぜての自然なインタビューで構成され、人はこれだけ様々な想いを持ってこの世に在るんだと考えされます。
映画を観る行為は、他の人の生や見ている世界を知ることでもありますが、ドキュメンタリーとフィクションの融合したこの作品はその真髄でしょう。

素人さんに負けず俳優陣が魅力的です。
名人芸の由利徹や原ひさ子さん、谷啓、香川京子、内藤武敏、寺島進。
主演の若い二人は透明感のあるARATAと、鬱屈した役柄が印象的な沖縄出身の小田エリカ。
演技が実生活と重なり、観る者は自身を振り返らずにはいられません。

死は終末でなく、ひとつの節目。
人は何のために生きているのか、そんなことさえも浮き彫りになってゆきます。

思い出を選べない男性は、人生を1年で1本記録したビデオを参考にするのですが、そこには忘れていた記憶や思いがけない自分が映っています。
ショックを受けながらも男性はいつしか事実を受け入れ、大事なことに気づいていきます。

そして、そのビデオにはスタッフ自身の過去とも関係する、ある事実が隠されていました・・・。

「誰でも誰かの幸せに参加しているんですね・・・」
一度きりの人生を新しい見方で確かめられる名作。

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   しんや通信
    環境分析センター発行のカレンダーが好評。
    先日のNOP出会い市では、皆さんとお会いできて楽しかった!
    これからも見かけたら気軽に声をかけてね~。



ーえころん通信 2007年3月号よりー


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