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2009年08月25日

ブラザー・ベア

       Natural in Cinema!  第6回 「ブラザー・ベア」     今泉 真也

 アニメの王者ディズニーの作品には外れがありません。
 伝えたいこと、伝えたい相手がはっきりしていて、ストレートに直球を投げてくるからです。
 大人になると見えてしまう人生の曖昧なグレーの部分さえも、ディズニーの映画は肯定して描こうとして
 いるように思えます。

 今回ご紹介するボブ・ウォーカーとアーロン・ブレイズの監督作「ブラザー・ベア」は、
 人はなぜ特別な存在ではないのか、という、基本的ながら示すのが難しくもある問いに、
 アラスカ先住の人々の世界観を借りて、勇敢にも答えを出そうとしています。
 「ライオン・キング」とも一味違う精神が息づいた傑作です。

 主人公のキナイはイヌイット民族の仲良し3人兄弟の末っ子。
 成人の時に、大いなる存在=グレイト・スピリットから人生の道しるべ(トーテム)を授けられるのですが、
 キナイは自分がそれが「愛のクマ」だったことが不満でした。

 彼にはクマなど、凶暴なだけで何も考えていない生き物だとしか思えないのです。
 そんなとき兄弟は森で巨大なクマに出会い、やるせなくも闘いが始まってしまいます・・・。

 人がクマを殺してきた理由は様々です。恐怖、最強の動物に勝つステイタス・・・。
 もちろんアイヌや山のマダギのように、肉や毛皮が生きるために必要だった場合もあります。

 アラスカでも人々はクマを敬い、肉を食べても必ず祈りをあげてきました。
 「人もクマも同じ生命」であることを、クマになったキナイの視線で私たちは体験していくのです。
 動物の体格や動きが正確なことで、物語にリアリティがあります。

 ウーマク子グマのコーダ。
 愉快なヘラジカの兄弟。
 愛に満ちたクマと人間の世界が双方描かれています。

 キナイがクマになっても全然驚かないお婆さんが素敵。
 そんな時代が本当にあったのでしょう。
 子ども向けと思われる方も、まずは観てください。

 吹き替え版で大きな音にするとベストです。
 感動的な歌を担当したフィル・コリンズが日本語を頑張っています。
 ダイナミックな音楽のリズムに乗って先に進むうちに、
 あなたは深く重いテーマにおどろき、やがて圧倒的な愛の物語に愛するでしょう。


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  しんや通信
   今月は十年ぶりに新調した水中機材のテストも兼ね連日海へ。
   サンゴの戻りつつある所、死んだままの所、辺戸岬では吹雪の如きハマダイの群れに思わず感涙。
   海はまだ生きている!
   石川真生&浦島悦子ペアにより写真集「シマが揺れる」(高文研)が出版されました。
   ぜひ見てね。



ーえころん通信 2006年12月号よりー
 



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